クリニック・医療系テナントの解体工事は、
一般店舗より複雑です
クリニックの解体工事は、一般的な店舗の内装解体と比べて、設備・法令・ビル管理ルールなどの確認項目が多く、費用や工期も大きく変動しやすい工事です。
特に、レントゲン室の防護壁、医療ガス配管、複雑な給排水設備、医療廃棄物の処理など、医療機関ならではのポイントを事前に把握しておくことが重要です。
このページでわかること
- 院長・事務担当者が事前にやるべきこと
- 解体工事の種類(内装解体・スケルトン解体・原状回復)
- A工事・B工事・C工事の違い
- クリニック解体費用の相場
- 追加費用が発生しやすいポイント
- 失敗しないための進め方
解体工事は「どこまで解体するか」で大きく変わります
解体工事といっても、撤去範囲によって工事内容は大きく異なります。
クリニックの解体では、主に次の3種類を理解しておくことが大切です。
| 種類 | 目的 | 撤去範囲 | 費用感(目安) | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 内装解体(部分解体) | 必要な部分だけ撤去して使える部分を残す | 内壁・受付・造作家具・間仕切り・照明など(天井・床・基本構造は残すことが多い) | 比較的抑えやすい(範囲次第) | 次の入居者の要望に合わせて部分的に調整したい場合/一部設備を残せる可能性がある場合 |
| スケルトン解体 | 躯体(構造体)だけ残してすべて撤去する | 天井・床材・配管・空調・造作・パーティション・防護壁・医療ガス配管などを撤去 | 高くなりやすい(撤去範囲が広い) | 次のテナントが未定/オーナーからスケルトン返却を求められている場合 |
| 原状回復工事 | 賃貸借契約に基づき、入居時の状態に戻す | 契約内容に応じて決定(医療設備の撤去範囲は契約確認が必須) | 契約条件で大きく変動 | 退去時の一般的なケース(医療テナントで最も多い) |
① 内装解体(部分解体)
内装解体は、内装の一部を撤去する工事です。
天井・床・基本構造は残しつつ、必要な部分だけを解体します。 店舗内装解体工事_提出用 店舗内装解体工事_提出用
主な内容
- 内壁の撤去
- 受付カウンター・造作家具の撤去
- 間仕切り壁の撤去
- 照明・室内設備の取り外し
こんなケースに多い
- 次の入居者の要望に合わせて、部分的に撤去したいとき
- 次のテナントが医療系で、一部設備を残せる可能性があるとき
② スケルトン解体(構造体のみの状態まで撤去)
スケルトン解体は、内装をすべて撤去し、建物の躯体だけを残す工事です。
「コンクリートむき出し」の状態まで戻すイメージです。
主な撤去対象
- 天井ボード
- 床材・配管
- 空調設備
- 防音工事・放射線防護壁
- 医療ガス配管設備
- 造作家具・パーティション 店舗内装解体工事_提出用
こんなケースに多い
- 次のテナントが未定
- オーナーからスケルトン返却を求められている
③ 原状回復工事(もっとも一般的)
原状回復工事は、賃貸借契約書に記載された「入居時の状態」に戻す工事です。
医療機関では特に、契約内容の確認が重要です。
医療施設で注意したいポイント
- レントゲン室の防護壁をどう戻すか
- 給排水・医療ガス設備をどこまで撤去するか
- 共用設備(空調・トイレ等)の扱い
- 入居時の什器備品の扱い 店舗内装解体工事_提出用
トラブルが起きやすい理由
- 医療設備は入居後に追加されていることが多い
- 入居時の状態を覚えていないことが多い
- オーナーとの認識差で追加請求になりやすい(数百万円規模も)
※写真・図面・内装引継ぎ書があれば、必ず確認してから解体範囲を決めるのがおすすめです。
ビルテナントでは「工事区分」の理解が必須です
クリニックが入居するビルでは、工事区分(A工事・B工事・C工事)の理解がとても重要です。
ここを誤解すると、見積もりや退去費用で大きな差が出ます。
| 工事区分 | 発注者 | 費用負担 | 代表例 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| A工事 | オーナー | オーナー | 共用部(トイレ・エントランス) 共用空調 ビル全体に関わる設備 | 基本はクリニック負担ではないが、ビルルールの確認は必要 |
| B工事 | オーナー | クリニック (テナント) | 空調容量追加 防災設備調整 給排水増設 防火区画調整 | 医療系テナントはB工事が多くなりやすい。 開業時にB工事が多いと退去時も高額になりやすい |
| C工事 | クリニック | クリニック | 室内間仕切り 造作 内装仕上げ 医療機器撤去など院内工事 | 比較見積もりしやすい区分。 業者選定で金額差が出やすい |
A工事(オーナー発注・オーナー負担)
ビル全体や共用部に関わる工事です。
基本的にクリニック側の負担ではありません。
例
- 共用部(トイレ・エントランス)
- 共用空調
- ビル全体に関わる設備
B工事(オーナー発注・クリニック負担)
クリニックが希望する工事でも、ビル設備に関わるものはB工事になることがあります。
医療機関では非常に多い区分です。 店舗内装解体工事_提出用
例
- 空調容量の追加
- 防災設備の調整
- 給排水の増設
- 防火区画の調整 店舗内装解体工事_提出用
ポイント
- 開業時にB工事が多いクリニックは、退去時も高額になりやすい傾向があります。
C工事(クリニック発注・クリニック負担)
室内の間仕切りや造作、医療機器撤去など、院内の工事が中心です。
解体業者を比較しやすく、費用調整しやすい区分です。
クリニック解体の費用相場
一般的な店舗より、医療機関は設備が多いため解体費用が高くなりやすい傾向があります。
| 工事種別 | 坪単価目安 | 追加費用が出やすい要因 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 内装解体(部分解体) | 2万円〜6万円/坪 | 給排水が多い 部屋数が多い 造作が多い | 範囲が限定されるほど抑えやすいが、医療設備の有無で変動 |
| スケルトン解体 | 4万円〜7万円/坪 | レントゲン室(鉛ボード撤去) 医療ガス配管 特殊設備撤去 | レントゲン室がある場合は+20〜100万円の追加が発生することがある |
| 原状回復工事 | 2.5万円〜5万円/坪 | 契約条件の解釈差 どこまで戻すかの認識違い 設備撤去範囲 | 契約書・入居時資料の確認で差が出やすい |
内装解体(部分解体)の相場
- 1坪あたり:2万円〜6万円
- 給排水・部屋数が多いクリニックは高くなりがちです。
H3:スケルトン解体の相場
- 1坪あたり:4万円〜7万円
- レントゲン室がある場合は +20〜100万円 程度の追加が発生するケースがあります。
原状回復工事の相場
- 1坪あたり:2.5万円〜5万円
- 契約内容・設備の状況によって大きく増減します。
費用が高くなりやすい設備(医療系)
| 設備・条件 | 費用が上がりやすい理由 |
|---|---|
| レントゲン室(鉛ボード) | 特殊撤去・特殊処分が必要になりやすい |
| 医療ガス配管 | 撤去方法の確認と安全対応が必要 |
| 特殊な給排水設備 | 水回りが多いほど配管撤去の手間が増える |
| 特大エアコン・大型設備 | 搬出・撤去に人員や重機が必要になることがある |
| 重量医療機器 | 専門搬出業者が必要になる場合がある |
追加費用の原因を先に知っておくと、見積もりの比較がしやすくなります
クリニック解体では、次のようなケースで追加費用が発生しやすくなります。
① 医療機器の搬出が難しい
CT、X線装置、オートクレーブなどの重量物は、専門の運搬業者が必要になることがあります。
その分、搬出費が上がりやすくなります。
② レントゲン室の鉛ボード撤去
鉛を含む防護材は特殊処分が必要です。
30〜150万円 の追加費用になるケースもあります。
③ 給排水設備が複雑
処置室・検査室・洗浄室など、水回りが多いほど配管撤去の手間が増え、費用が上がります。
④ アスベスト対応が必要
古い建物では、調査・届出・除去が必要になることがあります。
追加費用は数十万円〜数百万円になる場合があります。
⑤ 夜間・早朝工事になる
医療ビルでは診療時間中の騒音作業が制限されることが多く、夜間工事で割増になることがあります。
⑥ 搬出条件が厳しい(EV不可・階段のみ)
エレベーターが使えない、搬出ルートが限定されるなどで、人件費が増えることがあります。
⑦ 駐車・搬出スペースの確保が必要
ビルに駐車場がない場合、近隣駐車場の確保などが追加費用につながることがあります。
解体工事をスムーズに進めるための基本ポイント
トラブルを防ぐために、以下のポイントを事前に押さえておくのがおすすめです。
① 賃貸契約書の確認を最優先にする
特に次の項目を確認します。
- 原状回復の範囲
- スケルトン返却の有無
- B工事の扱い
- 医療機器残置ルール
- 鉛ボード撤去義務
- 給排水設備の扱い 店舗内装解体工事_提出用
② 工期に余裕を持つ(目安:1〜2ヶ月以上前)
ギリギリの依頼は、工事の遅延や追加賃料の原因になります。
また、繁忙期(12〜3月)は工事が取りづらいことがあります。
③ 相見積もりは最低3社
同じ内容でも、見積もり額に大きな差が出ることがあります。
100万円以上の差が出るケースも珍しくありません。
④ 極端に安い業者には注意
安さだけで選ぶと、違法処理・不十分な養生・共用部破損などのトラブルリスクがあります。
解体費用を抑えるためにできること
解体費用は、事前準備と交渉で大きく変わることがあります。
① 残置物をできる範囲で整理する
医療機器以外の家具・家電・雑品などは、事前に整理できるとコストを抑えやすくなります。
② 使える設備は売却・リユースを検討する
ベッド、事務机、PC、医療機器などは、売却できる場合があります。
撤去費の削減+売却益につながる可能性があります。
③ 相見積もりで比較する
同じ工事内容でも、業者によって金額や内訳の出し方が異なります。
内容を揃えて比較するのがポイントです。
④ オーナーと事前に相談する
次の入居者が医療系の場合、以下の一部が残置OKになることがあります。
- 給排水
- 一部の間仕切り
- 鉛ボード(条件による) など
これにより、数十万円単位で費用が下がるケースもあります。
工事だけでなく、院内側の準備も同時に必要です
クリニック解体では、工事業者に依頼するだけでは進みません。
院長・事務担当者側での準備タスクも多く、早めの着手が重要です。
① 医療機器のリース契約・保守契約の整理
解体前に、リース会社・保守会社との返却段取りを進めます。
搬出日が工事日程と重なると、工期遅延の原因になります。
② 医療廃棄物の完全撤去
医療廃棄物は解体業者が処理できません。
残っていると工事が止まり、工期延長や追加賃料の原因になります。
③ 電子カルテ・患者情報の保管対応
閉院後もカルテ保管義務があるため、データ保存や保管体制の準備が必要です。
解体とは別タスクとして、計画に組み込む必要があります。
④ 医療機器の買取査定を検討する
使える医療機器は売却できることがあり、解体費の圧縮につながります。
特に大型機器は早めの査定依頼がおすすめです。
クリニック解体の実務スケジュール
以下は一般的な流れの目安です。
閉院・移転の計画と並行して、余裕を持って進めるのがおすすめです。
閉院3〜6ヶ月前|準備開始
- 賃貸契約書の確認
- オーナーへ意向連絡
- 解体範囲の確認
- 医療機器リース会社へ相談
H3:閉院2〜4ヶ月前|業者選定
- 現地調査依頼
- 見積もり取得(最低3社)
- 医療機器買取査定
- 解体日程の調整
閉院1ヶ月前|内部整理
- 残置物の撤去
- 医療廃棄物の完全処理
- 電子カルテデータ保存
- 医薬品の返却または廃棄
閉院日〜解体工事
- 医療機器の搬出
- 院内設備の撤去
- スケルトンまたは原状回復工事
- 工事完了後の引き渡し
解体工事で起きやすいトラブル
実際には、事前準備不足や契約確認不足でトラブルになるケースが少なくありません。
事例1|レントゲン室撤去費が想定より高額
見積もり時より高額になった原因として、鉛ボードの二重構造など、現場で判明するケースがあります。
→ 事前調査の重要性が高いポイントです。
事例2|医療廃棄物が残っていて工事ストップ
医療廃棄物は解体業者が対応できないため、工期延長・追加賃料につながることがあります。
事例3|電子カルテデータの保存漏れ
閉院後の患者対応で問題になるため、法令対応としても事前準備が必要です。
H3:事例4|原状回復範囲の認識違い
契約書の記載が曖昧だと、追加費用が発生しやすくなります。
オーナー・管理会社・施工側で事前認識を揃えることが大切です。
店舗内装解体工事を進める前に確認したいこと
クリニックの解体工事は、一般店舗よりも専門性が高く、費用・工期・法令対応の確認が重要です。
特に以下を先に整理しておくと、トラブルを防ぎやすくなります。
- 賃貸契約書を確認した
- 原状回復範囲を確認した
- オーナー・管理会社に相談した
- 相見積もりを3社以上取得した
- 医療機器の搬出段取りを決めた
- 医療廃棄物の処理手配をした
- 電子カルテ・患者情報の保管方法を決めた
- 工事スケジュールを確認した
まずは「解体範囲の整理」から始めるのがおすすめです
最初に「どこまで戻すのか(原状回復/スケルトン/部分解体)」を整理できると、見積もり比較もしやすくなります。
そのうえで、医療設備・法令対応・引き渡し条件まで含めて進めると、閉院・移転をスムーズに進めやすくなります。