内装工事の前に準備が必要な理由
クリニック開業では、内装工事は大きな山場ですが、実際にはその前に決めておくべきことがたくさんあります。
事前準備が不十分なまま工事に入ると、工事の遅延・追加費用・レイアウトのミスマッチ・開業時期の後ろ倒しにつながることがあります。
また、クリニックは一般的な店舗と違い、医療法・建築基準法・消防法・バリアフリー・感染対策など、確認すべき条件が多いのも特徴です。
そのため、まずは「工事前の準備」を順番に整理することが大切です。
工事前準備の全体像
クリニックの内装工事は、設計事務所・施工会社・医療機器業者・行政・消防・オーナーなど、関わる人が多く、工程も複雑です。
そのため、まずは全体の流れを把握し、開業日から逆算して準備を進めることが重要です。
工事前に押さえたい6つの準備ステップ
最初から細かく決めきるより、
まずはこの6ステップで「今どこにいるか」を見える化すると進めやすくなります。
1. 事業計画で整理しておくこと
工事前準備の最初の土台になるのが事業計画です。
ここが曖昧だと、必要な広さや設備、内装の方向性が決まりにくくなります。
事業計画で整理する項目
- 診療科目(内科・皮膚科・整形外科など)
- 診療方針・コンセプト
- 見込み患者数
- 必要な医療機器と電源容量
- 診察室・処置室の数
- スタッフ人数
- 1日に受け入れたい患者数
- 感染対策を含む動線計画
診療圏分析で確認したい項目
- 商圏人口
- 同診療科の競合数
- 年齢構成
- 平日/休日人口の違い
- 診療科目ごとの需要予測
これを整理しておくと、必要坪数や初期投資額の目安も見えやすくなります。
事業計画は「融資のため」だけでなく、
内装の優先順位を決めるための資料 としても重要です。
2. 物件探しで確認すること
物件選びは、立地だけでなく「クリニックとして使えるか」の確認がとても大切です。
工事ができる前提条件(設備・法令・テナントルール)を、早い段階で確認しておきましょう。
立地・アクセスのチェックポイント
- 駅からの距離
- 視認性(路面・角地など)
- エレベーターの有無
- アクセスしやすさ
- 駐車場の有無(郊外型)
広さ(坪数)の目安
診療科目によって必要坪数の目安が異なります。
例として、内科・小児科は25〜35坪、皮膚科は20〜30坪、整形外科は40〜60坪など、診療内容に応じた広さの確保が必要です。
設備容量のチェックポイント
- 電気容量(CT・MRIなどは特に要確認)
- 給排水設備(手洗い・処置室・トイレ増設)
- 空調能力
- 換気設備(感染対策)
法令・テナントルールの確認
- 医療法に基づく面積要件
- 消防法(防火区画・避難経路)
- 建築基準法(用途変更の要否)
- バリアフリー対応
- 看板ルール・営業時間制限
- 天井裏施工可否・水回り増設可否
特に水回り・空調の増設可否は、開業可否に関わるため早めに確認しておくと安心です。
「立地が良い」だけで決めると、あとから設備・法令面で難しくなることがあります。
物件は 立地+設備+法令 の3点で確認するのがおすすめです。
3. 基本計画で決めること
候補物件が決まったら、ラフプランをもとに基本計画を進めます。
この段階では、レイアウト・動線・予算・スケジュールの方向性を整理して、後工程の土台をつくります。
基本計画で整理する内容
- ラフプラン作成
- 動線計画(受付〜診察〜処置〜会計)
- 感染対策導線の整理
- レイアウト方針の決定
- 予算の初期設定
- 全体スケジュール作成
- 保健所・消防への事前確認
特に重要なのは「動線計画」です
クリニックでは、患者さん・スタッフ・物品・感染対策の動線を整理しておくことがとても重要です。
ここが曖昧だと、患者さんの滞留やスタッフ負担、医療安全面の課題につながりやすくなります。
工事前の段階で、できるだけ具体的に整理しておくのがおすすめです。
患者動線で見るポイント
- 入口から受付まで迷わない
- 待合から診察室までスムーズ
- 会計・退出が混雑しにくい
- 案内表示がわかりやすい
スタッフ動線で見るポイント
- 診療・処置の行き来がしやすい
- 備品補充・清掃動線が無理なく取れる
- 患者動線とぶつかりにくい
- バックヤードへのアクセスがよい
動線は「図面ができてから」ではなく、
ラフプランの段階で先に考える と、後からの修正が減りやすいです。
4. 概算費用を把握して融資準備を進める
基本計画のラフプランをもとに、施工会社へ概算見積もりを依頼し、融資準備を進めます。
この段階では、内装費だけでなく、医療機器費・広告費なども含めて初期投資全体を整理しておくことが大切です。
融資準備でよく使う書類
- 事業計画書
- 初期投資計画(内装費・医療機器・広告費など)
- 資金繰り表
- 見積書(内装・医療機器)
- 医師免許証
- 確定申告書/源泉徴収票(勤務医の場合)
初期投資の整理表
| 項目 | 内容の例 | 備考 |
|---|---|---|
| 内装工事費 | 内装・設備・施工費 | 概算見積もりで確認 |
| 医療機器費 | 診療機器・什器備品 | 診療科で大きく変動 |
| 広告・広報費 | 看板・Web・印刷物 | 開業前後で必要 |
| 運転資金 | 開業後の固定費など | 余裕を持って見込む |
見積もりは「内装費だけ」で見ずに、
開業に必要な全体費用 として整理すると、資金計画が立てやすくなります。
5〜6. 基本設計・実施設計で進めること
融資の目処が立ったら、設計事務所と正式に進め、工事に必要な図面や仕様を固めていきます。
クリニックは設備要件が多いため、設備図面の精度が特に重要です。
基本設計で作る主な図面・資料
- 平面図
- 断面図
- 電気設備図(医療機器容量を含む)
- 給排水設備図
- 空調図
- 照明計画
- 仕上げ仕様書(床・壁・天井)
実施設計・最終調整で確認すること
- 正確な工事見積もりの確認
- 予算調整(優先順位の整理)
- 設備・仕様の最終確定
- 医療機器の搬入経路確認
- 行政への最終申請準備
- 工事契約に向けた最終確認
一度で全部そろえようとせず、
「今どこまで決まっているか」を確認する使い方でも大丈夫です。
工事前準備の実践チェックリスト
最後に、工事前に確認しておきたい内容をチェックリストでまとめます。
打ち合わせ前の整理や、進捗確認用として使っていただけます。
- 事業計画(診療科目・患者数・設備)が整理できている
- 診療圏分析の内容を確認できている
- 物件の立地・広さ・アクセス条件を確認できている
- 電気容量・給排水・空調・換気を確認できている
- 法令・消防・バリアフリー・テナントルールを確認できている
- ラフプランで動線計画を整理できている
- 概算見積もりを取得している
- 融資準備書類をそろえ始めている
- 基本設計で必要な図面・仕様の整理ができている
- 最終調整の優先順位(予算・設備・工期)が決まっている
この段階では「デザインを詰める」だけでなく、
工事が安全に進められるか という視点での確認が大切です。
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工事前準備が整理できたら、次は工事全体の流れや、内装の条件・診療科別のポイントを確認すると、より具体的に計画しやすくなります。
まとめ
クリニックの内装工事は、工事に入る前の準備で進めやすさが大きく変わります。
事業計画・物件確認・動線計画・費用整理・設計準備を順番に進めることで、手戻りや追加費用を減らしやすくなります。
まずは「今どこまで整理できているか」を確認しながら、無理のないペースで進めていきましょう。
実際の工程やスケジュール感を知りたい方は、「工期とスケジュール」のページがおすすめです。